2023/11/3 μ-250 , Rima Reiko

この日は気流が良く、何とかレイコ谷を写すことができました。12/2付のヤンセンと同じ日で、場所も近くです。

レイコ谷は晴れの海と静かの海の境界付近にある非常に細い谷で、日本人の女性の一般名が付けられています。ドーズの北側に よく目立つ長さ10kmくらいの細長いくぼみがあり、レイコ谷を見つけるのによい目印になります。(ドーズは「ドーズの限界」で知られるイギリスの天文学者です。)

2023/11/5 μ-250

上の画像の部分拡大

レイコ谷の長さですが、moon wikiには2km、IAUのサイトにはDiameter4.29kmと記載されています。隣のマルセロ谷と並行し、途切れながら南東へ長く続いているように見えるのですが、北東側の太い部分のみがレイコ谷と定義されているようです。IAUのサイトにその部分のみが青線で示されています。
下はアポロ17号によるレイコ谷付近の画像です。

(C)NASA Apollo17 Images

レイコ谷の太さはLROC Quick Mapで見ると太い所で500mくらいでしょうか。途切れたクレーターの列のようにも見えます。(下の画像)
左上から右下へ並行して伸びる2本の谷のうち、下側がレイコ谷。

日本国内の悪条件のもとで どれくらい細い谷まで写すことができるのか、というのは面白いテーマだと思います。クレーターの場合、プラトー内部で0.8~0.9kmあたりが限界(μ-250)だったように思いますが、長さがある谷は条件が変わることでしょう。幅だけでなくて深さや明るさ、影の出来具合、谷の途中の小クレーターの有無など、様々な条件が影響すると思います。LROC Quick Mapで大体の幅は判るので、またいろいろ探ってみたいと思います。

(C)NASA LROC Quick Map


レイコ谷のことは「月探査情報ステーション」の「月面の地名で日本に関係したものはありますか?」というページで知りました。この表で知らなかったのがレイコ谷、ヨシ、タイゾウの3つで、いずれも実在した人物ではなく日本人の一般名だそうです。そのような名前も月面の地形に名付けられるのですね。

DMA(米国防衛地図局、現在の国家地理空間情報局の一部)がNASAのためにアポロ宇宙船の画像を使って作成したLTO(月の地形オルソフォトマップ)という月面地図があります。このLTOシリーズの拡張版としてLTO内の小さなセクションをカバーするためにLunar Topophotomap(トポフォトマップ)が作成されました。
Topophotomapのサムネイル画像を見ると判るのですが、非常に狭い地域を対象とした地図で、地上からの観測では歯が立たないような地形が多いように思います。

このTopophotomapにレイコ谷、ヨシ、タイゾウの地名が書かれています。
たとえばレイコ谷の場合、LTOマップはこちら、Topophotomapはこちらです。
LTOにもレイコ谷ははっきりと写っていますが、地名は書かれていません。

レイコ谷のすぐ隣のマルセロ谷について調べてみると、マルセロというのはイタリアの男性の一般名だそうで、レイコ谷とともにTopophotomap関連でのみ使用することを意図していたそうです。また近くのメアリーはヘブライ語の女性名の英語形だそうです。どうもTopophotomapの地名は各国の一般名が多いのかな?という気がします。

月探査情報ステーションには「月には日本に限らず、各国の一般的な人名がついた地名があります。例えば、日本人にもなじみのある名前でいえば、フランス人の女性の名前でジュリアンヌ(Julienne)、ロシア人の男性の名前でイワン(Ivan)などがあります。」と書かれています。
ジュリアンヌとイワンについて調べてみると、やはりTopophotomapのみに記載されていた地名でした。

月面ウォッチングには「1973年のシドニーのIAU総会でいくつかの小クレーターには男性、女性の一般的なファースト・ネームを与えることにした」とあります。Topophotomap関連のみに使用されていたこれらの地名が、IAUによって正式に認められたということなのでしょう。

もうひとつ、Topophotomapを見ていて気になるのは名前の付く地形に偏りがあるように見えます。大きくて目立つ地形に名前が付いているわけではなく、どうしてここに名前が?と思うような目立たない小さな地形に名前が付いていたりします。月探査とか研究とか、何か理由があるのでしょうね。

たとえば上述のメアリーですが、直径1kmの非常に小さなクレーターです。(LROC Quick Mapだと500mくらいに見えます)。周囲にもっと大きなクレーターが数多くあるのに それらには名前が付いていません。またメアリーのすぐ近くにある10kmくらいある大きなくぼみにも名前はありません。
moon wikiにも「メアリーの南西にある細長い窪地に正式な名前がないのはなぜですか?あらゆる種類の一般的な望遠鏡を使用して、地球から観察することができます。」とあります。全く同感です。
このくぼみは最初に述べたレイコ谷の目印になる細長いくぼみです。(上から3枚目のアポロ17号の画像に付近の地名が入っています。)

日頃 月面の観察をしていて「名前が付いていない大きな地形が如何に多いか」ということを感じます。その一方で地上からはなかなか見ることができない数百メートルの地形に名前が付いていたりします。もっと月面の目立つ地形にいろんなユニークな名前が付けば更に興味が広がるし、月面観測の普及にもつながると思うのですが。

(注:日本語訳は翻訳ソフトの表現をそのまま用いているので、正確でない場合があります。)