神酒の海 Mare Nectaris

神酒の海は直径約333kmのほぼ円形をした海で 周囲はカタリナ、キリルス、テオフィルスの大型クレーター、馬蹄形のフラカストリウス、ピレネー山脈などに囲まれます。内部は平坦で、テオフィルスからの2次クレーターや馬蹄形のゴーストクレーター、ダゲールが見られます。
神酒の海は月のウサギの模様の片耳にあたり、もう一方の耳は豊かの海です。

2015.8.4

同上、地名入り

 


2024年1月20日、JAXAの小型月着陸実証機 SLIM が栞(Shioli)クレーター付近に着陸しました。栞は「神酒の海」の西にあるキリルスの内部にあり、直径が0.27kmの小さなクレーターです。

Shioliには名前がありませんでしたが、今回のプロジェクトに当たり名付けられました。
その由来は「SLIMで実証を目指す高精度着陸技術は、月探査の新時代を切り開くことが期待されています。SLIMが、歴史のターニングポイントに挟まれる「栞(しおり)」となるよう願いを込めました。(JAXA)」とのことです。

この名称は 国際天文学連合(IAU)に認定された正式のものです。

下はLROによるShioliです。
このShioliは直径が僅か0.27kmしかありません。(画像の右下にスケールバーが入っています)

(C) NASA LROC Images

過去の経験から、私のμ-250では大体0.8km~0.9km位のクレーターが撮影できる限界だと考えています。ですからとてもShioliを写すことはできません。

しかしShioliは比較的新しいクレーターで、太陽高度が高いときには実際の直径よりも広い範囲が明るく輝きます。ですからクレーターそのものを写すのは不可能ですが、光点として捉えることができそうです。

過去画像を調べると太陽高度が高いときには小さな光点が写り、太陽高度が低くなると何も写らなくなります。また他にこの場所にそれらしいクレーターはないので、おそらく間違いないだろうと思います。

下は2023/8に撮影した画像です。

2023/8/5 μ-250 笠井1.5倍バロー

上の画像の部分拡大


2024/1/25のJAXAの会見で、着陸予定地点の詳細な位置が公表されました。それによると経度 25.24889、緯度 -13.31549だそうです。LROC のQuickMapに入力してみると、下の画像のピンク色の場所がプロットされました。また実際に着陸したのは着陸予定地点から東へ55mの場所ということで、そのあたりに「+」を書き込んでみました。画像の左の白く輝く大きなクレーターが栞です。

(C)NASA LROC QuickMap

大きなトラブルに見舞われながらも素晴らしい成果が得られたと思います。おめでとうございます。今後太陽の向きが変わって、SLIMの活動が再開できますように!

2024/1/29に「昨晩SLIMとの通信が確立し、運用が再開した」とのポストがありました。太陽が傾いて、西に向いていた太陽光パネルに光が当たるようになったのでしょう。よかったですね!


アルタイの断崖は神酒の海を取り囲むように、同心円状に伸びています。

テオフィルスとボーモンのあいだには低い山脈が走ります(矢印)。普段はわかりませんが、欠けぎわに来ると大変目立ちます。