メードラーの菱形 Mädler’s square

「写真で見る月面観測」や「月面ガイドブック」、「月面とその観測」等にメードラー(メドラー)の菱形という地形が紹介されています。

ドイツのメードラーは、フォンテネルとバーミンガムに挟まれたあたりに規則正しい菱形を見つけました。プラトーの北側あたりです。菱形の一辺は104kmで高さは75m~90m、幅が1.5kmだそうです。
メードラーが月面図を出版したのが1834~1836年なので、その頃のことかと思います。

しかしその後の調査では、そのような菱形は存在しないということになりました。小口径だと薄暗い菱形に見えるが、口径が大きくなるとただ荒れた地域にしか見えない、とのことです。

あまり望遠鏡が大きくないほうが詳細が見えないので、全体的な形を捉えやすいのかもしれません。カーチスクロス(2023/7/14付)も同じような錯覚(?)だったように思います。

moon wikiには「?」付きで、メードラーの菱形の場所が掲載されています(下の画像の長方形のあたり)。この付近にはリッジや溶岩に埋もれたピークなどがあり、確かに菱形(長方形?)に見えるような気がします。ただ104km四方というほどの大きさはないようです。

2023/9/25 μ-180C

下は下弦側のこの付近の様子です。

2016/8/26 μ-250

また「写真で見る月面観測」にもメードラーの菱形のおよその位置が示されています。moon wikiよりも広い範囲で104km四方くらいの大きさはありそうですが、ざっと見ても菱形の輪郭はよくわからないように思います。

下はLROによるこの付近の画像です。真上からだと正方形のように見えます。

(C)NASA LRO Images

(C)NASA LRO Images

私がまだ子供だった頃、この地名に何か不思議な響きを感じたのを覚えています。何もなければ特に注目されることのない地域だと思いますが、あれこれ想像しながら眺めることができるのは楽しいものですね。


メードラーは月面のクレーターにも名前を残しています。
テオフィルスのすぐ東にある直径26kmのクレーターで、8/16付投稿の「SLIM着陸予定地点 栞」の画像に写っています。

2023/8/5 μ-250