ワルゲンチン Wargentin

ワルゲンチンは月面の南西部にある直径84kmのクレーターです。普通のクレーターは内部よりも周壁のほうが高いのですが、このワルゲンチンは内部が溶岩で満たされており、まるで木の切り株のように盛り上がった変わった形をしています。ワルゲンチンの内部(上部)には小さなクレーターが点在し、欠けぎわにくるとリンクルリッジも見ることができます。
ワルゲンチンはLunar100の43番です。

2015.8.27
2015.7.30

1が細長いクレーターのシラー、2がフォキリデス、3がワルゲンチン、4がシッカード、5が複合クレーターのハインツェルです

2013.9.17


下は下弦側のワルゲンチンです。内部が平坦で暗く、リムが少し明るく見えています。そんな様子はクリューガーに似ており、普段よく見る満月前のワルゲンチンとは、ずいぶん違う印象です。
ちょうど同じような形に見えているインギラミとの対比も面白いです。インギラミ谷はLunar100の97番です。

2023/10/12 μ-180C

下は欠けぎわから少し離れたワルゲンチンです。

2023/9/12 μ-250


ワルゲンチンについて調べていたら面白い記事を見かけました。
2007年1月9日のLPOD

画像を見ると上弦側(満月前)のワルゲンチン内部に、不思議な形をした影が伸びています。
Chuck Woodは「ワルゲンチンの右上にある奇妙な湾曲した影はこぼれたインクのように見える。その影を落としている尾根はほとんど見えない。それは私が月で見た最小の地形からの最大の影だ。」というように述べています。
私にはこぼれたインクよりも、コウモリの羽(バットマンのマーク?)のようにも見えます。

過去画像を調べてみると、近いものが見つかりました。上の記事よりは少し影が長いようですが、何となく影を落としているリッジも見えているような気もします。記事の画像に合わせるために南を上にしています。

2013/9/17 μ-250

この日は秤動があまりよくありませんでした。ワルゲンチンは秤動の影響が大きい場所ですし、僅かな条件の差でも見え方が変わるかもしれません。タイミングが合えば、今後も追いかけてみたいと思います。

NASAの月探査機 LROによるワルゲンチン (C)NASA LRO Images

「かぐや」HDTVによるシッカード (ワルゲンチン → シッカード)