牡羊座の蹄跡 Aries Hoofprint

月面の中央あたり、ヒギヌス谷のすぐ北に暗くて荒れ果てたような地形があります。カエサル(シーザー)、ボスコビッチとともに東西に並び、月面好きの方ならきっとご存じかと思います。
とても目立っているのに月面図には地名がないので、ずっと気になっていました。

2023/11/5 μ-250

2023/5/27 μ-250

この地形の中に小さなクレーターがいくつかあります。これらは近くのヒギヌスの名前からヒギヌスEとかヒギヌスWなどと呼ばれます。また螺旋状の形をしたシュネッケンベルグ山(うずまき山)というのもありますが、現在はこの名前は使われていません。下の画像の円内あたりですが、面白い形をしていますね。

2016/5/14 μ-250(上弦側)

2023/11/5(下弦側)

このように部分的には地名が付いていたりしますが、この地形全体に公式の名前はないようです。

ネットで調べていると、アストロノミー誌2018年5月号の「Observe shadow play on the Moon」という記事で、この地形のことが紹介されていました。月面Xやクラビウス・アイなど、光と影による面白い現象が多数取り上げられています。

その記事ではこの地形をAries’ Hoofprint(牡羊座の蹄跡)と呼んでいました。他にも「「蹄鉄」や「月の唇」と呼ぶ人もいるだろう。文字を当てはめるなら「月面U」だろう」とあります。

蹄跡(ていせき)とは「馬が歩いたあとに蹄(ひづめ)によってその跡が溝のようにできたところ」だそうです。確かに地面が掘れた跡が2本あるように見えますね。
また「月の唇」以外にも「黒い唇」という呼び名も見かけました。

moon wikiにはアストロノミー誌の電子メールの内容として
「牡羊座は確かに月に降り立ったことがありませんが、月面に大きな蹄跡を残したものと想像するのは楽しいです。月の赤道のすぐ北にあるこの地域で目を引く物のひとつは、楽しい「牡羊座の蹄跡」です。明るく照らされた山々と、暗い溶岩の2つの深い溝の組み合わせが、この印象的な光と影の遊びを生み出します。」と紹介されています。

こういう発想ができるのは素晴らしいですね。
名前が付いてないのだったら 正式にこれにすればいいのになぁ、と思ったりもします。

2023/11/5 μ-250