2024/6/16 μ-180C IR685  Kies A , Cauchy

キースは内部を溶岩で満たされた直径44kmのクレーターで、ドーム地形のキースπがあることで有名です。この南にあるキースAは直径14.5kmの小さなクレーターですが、日の出の頃に面白い影を落とします。

2024/6/16にその様子を見ることができました。

2024/6/16

上の画像の部分拡大

キースAから西に伸びる影が中央あたりで2本に分かれ、ネコ耳のように見えています。下はLTVTによるこの時のシミュレーション画像です。

日没や雲の関係でこの時刻の撮影になりましたが、1時間半くらい前だとウサギの耳のように長く伸びて見えていたはずです。

下はLROCのQuick Mapによるキース付近です。画像上部に見える溶岩に埋もれたクレーターがキース、中央にある2つのクレーターの大きいほうがキースAです。

影が2本に分かれて見える理由ですが、キースAの周壁の左上(時計の11時あたり)に小クレーターが見えます。ここから光が漏れているのかな?と思ったのですが位置が少し北過ぎるようです。
小クレーターの南側に周壁が少し低くなったように見えるところ(時計の9時あたり)があります。
高度を見るとこの部分は周辺より400mくらい低くなっているようで、きれいなV字型をしています。おそらくここから光が漏れているのでしょう。

(C)NASA LROC Images

(C)NASA LROC Images

(C)NASA LROC Images

moon wikiのキースのページには次のように書かれています(翻訳のまま)。
「キースAの影は、中央部分で「途切れて」見えます。この「途切れ」は、クレーターの西側の縁にある奇妙な翼のような形状によって生じています。2つの翼のような付属物が、クレーターの西側の縁から放射状に北北西と南南西に伸びています。」

下の過去画像でも触角のような直線状の尾根が2方向(北北西と南南西)に伸びています。これを翼と呼んでいると思うのですが、この2本の尾根の付け根付近がV字型の谷のようになっている場所あたりです。

2017/05/06 μ-250

2012年5月18日のLPODには「角と翼」というタイトルでキースAの影の素晴らしいスケッチが掲載されています。
ここでChuck Wood氏が次のように述べています。
「このような翼は、二次クレーターなどの隣接するクレーターの同時衝突によって形成されることが多い噴出物の尾根です。また、一部の単一のクレーターで形成されるようで、斜め衝突を示している可能性があります。キース A の西側の縁は、すぐ隣の縁の部分よりも 350 ~ 450 メートル低く、翼の高さは約 65 メートルに達します。」

斜め衝突で「翼」とV字型の谷のような地形が出来たということでしょうか。面白いですね。

次回、キースAの影を条件よく見ることができるのは2024/12/10です。また楽しみにしたいと思います。下はLTVTによる12/10の日没頃のシミュレーション画像です。


moon wikiのキースのページには「同様の形状は、静かの海のコーシーでも顕著です。」とあります。
そういえばコーシーから2本の影が出ているのを見た記憶があります。
過去画像を探してみたら確かにそうなっていました。またキースAの翼のような尾根らしい地形?も見えています。

2007/3/23

2024/4/13

2012/9/4 μ-250


下はLROCのQuick Mapによるコーシーです。

(C)NASA LROC Images

(C)NASA LROC Images

コーシーが夜明けを迎えるのは夕方の細めの月なので、なかなか捉える機会は少ないと思います。
次回条件が良いのは2024/12/5の日没頃でしょうか。下はLTVTによるシミュレーション画像です。


キースAやコーシーと同じような影が出来るクレーターとして、クリーガーが知られています。
2023/11/24の撮影日記

クリーガーの場合は内部から西側の周壁を超えて細い谷が出ており、この谷が隙間になって光が漏れるので影が2本に分かれます。

他にもクレーターからの影ではありませんが、ラングレヌスの夕暮れ時に中央丘がネコ耳のような影を落とします。これはラングレヌスの中央丘は南北にαとβという2つのピークがあるためです。
2023/10/3の撮影日記

他にも同じようなクレーターがあるかもしれません。また気を付けて見てみたいと思います。